都市計画からまちづくりに携わる建築家・二瓶正史氏をお招きし、
まちづくりの考え方やそれを実現する外構や道路の計画手法についてお話しいただきました。
1997年宮脇檀建築研究室から独立し、アーバンセクションを設立。建築と都市の関係性を重要な視点として、インテリア設計から地域計画まで幅広く活動している。
セミパブリックゾーンの発見
かずさの杜ちはら台(千葉県市原市)
道路境界から1m程の私有地(=セミパブリックゾーン)は、公共の役割も大きく、この領域がまちづくりに重要な役割を果たすと二瓶さんは言います。
例えば、セミパブリックゾーンに同じ樹木を植えれば、それが道路並木になります。門灯を統一すれば、街路灯の役目も担います。
セミパブリックゾーンに共通性や連続性を持たせることが、道路景観やまちなみを形成する方法。「〈プライベート=個〉が〈パブリック=公〉に貢献する」のです。
グリーンテラス城山(愛知県小牧市)
青葉台ぼんえるふ(福岡県北九州市)
近隣の屋外活動の場となるコモンは、公共の公園とは違い、管理をするのは地域住民。そのため、愛着が沸きやすく、身近な環境として活用していただけます。
まちづくりのポイントは、コモン沿いに住宅を集めて設計をすること。そうすることで住民の方が意識していなくても、自然とコミュニケーションが生まれます。
宅地スペースが小さな場合こそコモンを意識することで、共有の庭ができ、豊かな暮らしへと導くことができるそう。
つくば二宮住宅地(茨城県つくば市)
ボン・ジョーノ3街区(福岡県北九州市)
まちづくりのもう1つのポイントは道路。自動車のための道路から、人のための道路へと見直していくことが必要です。
自動車が走行しにくい形や幅にしたり、舗装デザインを工夫して道路には見えない道路にするなど、人目線での計画をしましょう。
そうすることで歩行者が快適に歩けるようになるだけでなく、道路が子どもたちの遊び場や近隣の方とのコミュニケーションの場に変わります。道路の役割は、通行することだけではありません。
住宅一斉掃除の様子
コモンのベンチコーナーづくりの様子
“まち”、“集まる”、“みんなの”といった観点を持って庭を設計することが、そのまちの〈アイデンティティ〉をつくるために重要だと言います。それは地域のコミュニケーションが生まれるきっかけになり、「住みやすい」「居心地がいい」といった暮らしの豊かさへとつながっていくから。
そのようなまちは、コモンなどの共有空間が住民によって良好に維持・管理がされた、安心・安全なまちへと育っていくのです。
まちに目を向けて個々の庭を考えることで、コモンやまちなみに広がっていくことを
二瓶さんが手掛けられたたくさんの事例から感じることができました。
私たちが目指すべき、これからのまちなみを具体的に思い描いていただけたのではないでしょうか。
事前に応募いただいたまちなみ写真を題材に、二瓶先生からアドバイスをいただきながら
参加者みなさまで意見交換を行う、ディベート形式で行った「まちなみカンファレンス」。
遊歩道を設置したコミュニティスペースの事例では、歩車道を完全に分離することが必ずしも良いとは限らないとアドバイスをいただきました。それは現代のような車が必要な暮らしでは、単に歩道をつくっても使われなくなってしまう場合もあるから。広場としても利用できるように芝生の歩道にする等、+αの価値をつける必要があります。
また、複数のハウスメーカーが参加してつくりあげる分譲地では、住宅の形や色がばらばらでも「“あたま”と“足もと”=屋根と外構」を統一していくことで、まちなみを形成できることを学びました。
身近な事例を題材にしたことで、みなさまの仕事にすぐ活かせるポイントを見つけていただけたと思います。
弊社にとっても、みなさまから生のご意見をいただくことができ、大変有意義な時間となりました。
セミナー終了後に開催しました懇親会では
「個々の庭だけを考えても、まちなみはできないということがよく分かりました」
「“コモン”は聞き慣れていたはずだが、改めてその考え方に共鳴した!」
「人にとっての道について考えたことがなかった。道について考えていきたい」
など、多くの気付きがあった!と声をかけていただくことができました。
今後ともみなさまと一緒に「庭からはじまる 豊かなまちづくり」について考え、
より良い商品、より良いまちなみをつくっていきたいと思いますので、どうぞご期待ください!